食の伝統と文化はパタゴニアで働く私たちにとってつねに大切なものです。ブリティッシュ・コロンビアのファースト・ネーションの友人たちと食べた米杉の板に載せられたサーモン、チベットでヤクの毛のテントの中で食べたツァンパ、パタゴニアのガウチョたちと食べたアサドとチミチュリなど、数々の旅で味わった食事は私たちの体験の必要不可欠な一部です。私たちが食べるものはたんにお腹を一杯にして体に栄養を与えるだけではありません。良い食品は私たちの魂を高揚させ、世界をより深く理解する手助けをしてくれます。
そういう私たちがお気に入りの食品のいくつかをお客様と分かち合いたいと思うのは自然なことです。しかしそれはほんのはじまりにすぎません。それが食品産業により良い変革をもたらす機会であり、また緊急に必要とされていることだと私たちは信じています。パタゴニア プロビジョンズの目標は、私たちが行うすべてのことと同じく、「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」こと。そして最も重要なことは、「ビジネスを手段として環境危機に警 鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」ことなのです。
そして食品業界ほどこの危機が緊急に感じられる分野はありません。現代のテクノロジーと化学と輸送が一緒になり、これまで以上に人びとと食のあいだに距離を作っています。サーモンは無差別に捕獲されるか開水域の養殖場で育てられ、野生のサーモンを危機にさらしています。草原地帯は過放牧により荒らされ、家畜は抗生物質漬けにされ、古代の帯水層は持続不可能な農作物に吸い取られています。生産高を上げるために化学薬品が最大限に使用され、遺伝子組み換え作物の未知の影響が産業全体に暗雲のごとく覆いかぶさっています。すなわち食物連鎖は壊れています。
パタゴニア プロビジョンズは食物連鎖を修復するための解決策を探る試みです。私たちはいつも通り、袖をまくり上げ、各製品の調達方法についてできるかぎり学ぶことからはじめます。既存の最善策を利用することもあれば、新たな方法を模索することもあります。それはお気づきのように、昔ながらの方法である場合が少なくありません。
これから数か月そして数年間、私たちは環境問題に対処する食品の数々を提供し、同時に地元生産者の支援をつづけていきます。お気に入りのシェフと協力しながら、トレイルや水辺や自宅で仲間と一緒に食べたくなる栄養価の高い美味しい食品を考案します。成功すれば、新たな食物連鎖モデルの確立に役立つでしょう。禅師はそれを「振り向いて、一歩踏み出すこと」と呼ぶかもしれません。